







Blackberry Honey メイド物語
ヴィクトリア朝の英国を舞台にしたレズビアンのラブストーリー。メイド、音楽、そして思いがけない場所での愛の発見が特徴です。
みんなのBlackberry Honey メイド物語の評価・レビュー一覧

Bracer9
2023年09月14日
試しに一部のセリフや地の文の言語(英語、日本語、中国語)を切り替えながら確認してみたが、よく訳せているところもあれば、原文のニュアンスからかけ離れたような誤訳も散見した。特に日本語訳の場合は全体的に機械翻訳っぽく、積極的に勧められるものではないと感じた。そもそもの文体に違和感を覚えているのが素直なところ。
本編クリア後の後日談(?)によれば、本作は元々マルチエンディングの形を取っていたという。道理で一部のキャラクターとさらに関係を深める伏線的な描写があったなと納得。最後は結局今のような一本道に落ち着いたものの、個人的にはMiss Constanceルートが存在する世界線も欲しかった。
ゲーム自体に関しては素晴らしいの一言。キャラクターの細やかな機敏や心情の変化、時代背景を十分に活かしたストーリー展開が非常に秀逸で、他のレビューでも指摘されているように、CGのデッサン狂いと翻訳の粗さ(しかしそこは原文で読み進めることで回避可能)に目をつむればかなり完成度の高い百合物語と言えるのではないか。

hayakawa
2023年02月11日
19世紀の英国を舞台にしたメイド百合ヴィジュアルノベル。有志による日本語対応あり。
ファッションメイドではなく、ヴィクトリア朝のガチのメイドがモチーフとなっています。なので服装も当時のものを再現しており、飾り気の少ないヴィクトリアンメイド服となっているのが良いです!
主人公のロリーナはハウスメイドとしてレナード家に仕えていますが、職場環境がとにかく酷いです。賃金は安く、休みもなく、寒さも凌げぬ屋根裏部屋に住まい、先輩メイドからはいびられ、仕事を押し付けられ、主人の娘のわがままに振り回され・・・正直ブラックもいいところですが、そんな中、謎めいたパーラーメイドのタオファだけは彼女に救いの手を差し伸べてくれます。しかし同時に彼女のことをからかい弄ぶので、ロリーナはタオファのことを嫌い距離を置こうとするのですが、何故か気になってしまい、徐々にタオファに惹かれていくのが尊いです。
他の人も言ってますが、マイナスから始まる関係性っていいよね。
舞台が英国ということもあってか、皮肉の効いたクスっと笑える表現が随所に散りばめられているのも面白いです。ebi-himeさんの文体の魅力が遺憾なく発揮されていて好きです。
[b] +18パッチについて [/b]
無料の+18パッチがありますが、一つ注意点があり、SteamのDLCから+18パッチを当てると日本語で読めなくなります。日本語用の+18パッチが別(GoogleDrive)にあるのでそちらを適用しましょう。詳細はディスカッションを参照してみてください。
[b] その他 [/b]
・プレイ時間は20時間ほど
・選択肢なしの一本道シナリオ
・実績あり(14個)。本編読破で全解除可能。
[b] 総評 [/b]
ゲームタイトルに名を冠しているブラックベリーのように、境遇の酸っぱさと、百合の甘さのバランスが心地よい百合ゲーでした。メイドと百合が好きならオススメです!

HEMORON
2023年01月03日
5時間強でクリア。
一言で言えばメイド百合モノですが、この手のものにしては珍しく19世紀イギリスの下層民らしくシビアな世界に生きてます。製作者コメントで「その花びらにくちづけを」からインスピレーションを受けたとあったけど、サラ=ウォーターズの世界観に近い。
とは言えちゃんとハッピーエンドなのでその辺は安心を。
イラストは正直基本のデッサンに違和の感じる所が多々あったり、一部のキャラクターが設定上と見た目の年齢が一致していなかったりと多少の問題があったりと、巧いとは言い難い。とは言えノベルゲーのビジュアルにそこまで重きを置く人間でなければ全く問題ない程度には整ってはいる。
地の分は全体的に機械翻訳っぽいものの、それは意外に作品とマッチしている。
とは言えそれでも飲み込み辛い箇所はある。
個人的に一番引っかかったのは「嫌な人間だった」で終わってしまい、作中に救いのないサブキャラクターがいる事。一応なにがしかの決着、というか解決をしてくれるものと思っていたのでそこは残念。
悪い事をいくつかかいたけれど決して不出来な作品ではないので、百合に飢えているのなら買うべし。勿論公式MODも入れてね。

C_Witherspoon
2022年10月07日
この作品を一言で表すなら『愛』です。
少女ロリーナとタオファの恋愛と友愛、そして
少女タオファと老夫人の親愛と慈愛、そんなお話。
プレイ当初は、とある登場人物たちのロリーナに対してのあたりが強いので
すこし読むの面倒かも…と思ってしまいましたが…
そういったエッセンスがあるからこそ
ロリとタオファが育む甘酸っぱい『愛』が映えるわけですね…。
[b] 鬱屈とした感情から、ロリ・タオのあまっあまのイチャイチャを見せられたらね! [/b]
[b] こちとらカタルシスもひとしおってもんですよ! [/b]
そしてタオファの過去の物語もこの作品を彩る素晴らしい要素ですね。
人を思いやり、慈しむ『愛』がどのようにタオファの人格形成に影響したかを
短いながらに表現してくれた見事な回想でした。ちょっとホロっときましたわ…
甘いだけではない、少しの酸っぱさや・ほろ苦さも味わえる良質な読み物でした。
手放しでオススメいたします。
[strike] (このレビューは24の奇想曲の20番目ニ長調を聞きながら書かれました。) [/strike]

SvntnFls
2019年11月07日
拙訳ですが、制作者様の許可を得て、有志翻訳させていただきました。
※【重要】steam上で配信されているアダルトパッチは全年齢版のベースゲームとは互換性がないので適用しないようにしてください。適用した場合、日本語が選択できなくなります。ご注意ください。すでにパッチを適用した方はsteamプロパティのDLCタブからチェックをはずしてください。
日本語版のアダルトパッチのインストール方法はコミュニティハブのスレッドタブ内のピン留めされているスレッドか、アダルトページのレビューを参考にしてください。
[strike]また、明らかな誤訳、誤字脱字、日本語の間違えなどの報告を私のtwitterアカウントで受け付けています。ただし、特にキャラのセリフなどですが、意図的に英単語通りではない訳を当てた箇所もあるので、報告いただいたすべてを修正するわけではないことをご理解ください。[/strike]
リリースから1ヶ月ほど経ったので直リンはプロフの方に移動させました。
ここから下はプレイ直後に書いたレビューです。
まず初めにこれだけは書いておかなければなりません。
貧乏で生真面目だけど、どこか反骨心があって、変なところで強情で、自分の感情になかなか素直になれない初心な女の子と。包容力があって、たおやかで、自信に満ち溢れていて、忙しない日々の中でも普段の所作に余裕をもてるほど聡く、決して表には出さないけれどどこか脆さを感じさせる女性――そんな二人のいじらしく、手探りでお互いの形を確かめていくような関係性が好きならば、このゲームを見過ごすのは得策ではありません。
これは、そんな二人が鬱屈とした過去・現在から幸せで明るい未来へと向かっていく過程を書いた話です。(あるいはこのゲームをひと言で表現するならばヴィクトリア朝イングランドにおける社会人百合ゲーと言えないこともないかもしれない……)
以下、いくつかの特徴について書きます。
・レズビアンストーリーというより百合物語
・二人の関係だけにとどまらない豊かな描写
・ただし、イジメ・いびり描写は割と堪えた
・総じて言えば「完成度が高い」
・レズビアンストーリーというより百合物語
ストーリーに対する全体的な印象について。
ストアページのイントロダクションにはレズビアンラブストーリーとありますが、全部読み終えた印象としては、海外の作品でよく見られる社会問題をはらんだレズビアンストーリーというより、日本のアニメ・ゲーム・漫画などで描かれる百合に近いテイストのストーリーであるように感じました(英語と日本語の細やかなニュアンスの違いであるとは思うのですが)。あとがきによると制作者は「この花びらに口づけを」シリーズを知っているそうなので、日本の百合ジャンルについてある程度知識があるのかもしれません。ですので、普段は日本の百合作品しか馴染みのない方にも違和感は少ないのではないでしょうか。付け加えると、プレイしている最中に感じたことですが、日本の百合ジャンルの中でもこのゲームに最も近しいメディアは、シリアス寄りのストーリーが展開する百合ライトノベルではないかと思います(なぜ百合ADVでなく小説なのかは後述します)。
それで、どういった種類の百合なのかについて、ですが。
恋愛感情あり、キスあり、追加パッチで性交描写ありです。
二人の関係に男性が関わってくるかどうかに関してはまあ、あまり関わってこないとだけ書いておきます。過去にほんの少し……友人未満の関係で……と、まぁ、少し前の百合漫画なんかでよく見たようなパターンの、その程度の関わりです。 男性のビジュアルは、イベントスチルはおろか、立ち絵に至るまで存在しません、一応。
それと、意外なことに、同性愛に対する背徳感なんかは薄めです。19世紀のイングランドが舞台で、キリスト教の影響もいまだ色濃く残っている時代――作中でも日曜の礼拝が重要な役割を果たしている中で、もしかすると同性愛の背徳感がメインテーマに来るのかと身構えていましたが、申し訳程度に主人公が悩む描写があるものの、特にそれをひきずるような出来事はありませんでした。それよりも書くべき重要なテーマがあった、ということでしょうし、あるいは同性愛に徐々に寛容になってきている現代的な感覚に即したのかもしれません。
結論として、日本で百合と呼ばれるジャンルと似たような関係性が楽しめるのではないかと思います。
・二人の関係だけにとどまらない豊かな描写
本作はADVには珍しく、地の分が三人称で書かれています。ですので、読感としてはADVというよりノベルの方が近いのではないかと思います。文字が画面いっぱいに広がるビジュアルノベルならばいざ知らず、こういったADVタイプのゲームは、経験上、主人公による一人称で書かれることが多いです。それぞれ利点はあるのですが、作中における三人称の利点は、主人公が周りに注意を払う余裕がない場合でも周囲の情景を描写できるという点において十二分に発揮されています。主人公の感情と共に情景描写と絡めて、心情を表現するという技法はよく使われるものですよね。そう言った情景描写と絡めてイングランドの片田舎の風景、人々が日常生活をしている様子、主人公周りのキャラクターたちの一挙手一投足、それぞれが事細かに、度々、挿入されます。そういった「現在」における豊富な描写は物語内世界を身近に感じさせてくれました。
もちろん、主だったキャラクターにまつわる「過去」もよく描写されます。主人公であるロリーナ、そしてロリーナと恋人関係になるタオファの来歴もよく描写されています。特にタオファの回想シーンは心に響きました。「あ、これロリーナとタオファの話だったわ、そういえば。忘れてた」と、回想シーンが終わったときに、突然思ってしまうほど引きこまれした。
本作の魅力は、そう言った「現在」の横の広がりがある描写と「過去」の縦の広がりがある描写(つまりキャラクター設定の巧みさ)に根差しているのかもしれません。
・ただし、イジメ・いびり描写は割と辛かった
このゲームの主人公は、悲惨な境遇に直面しています。
下級使用人ならではの粗末な居住環境はもとより、先輩メイドからの虐めや直接の奉仕先である雇い主の娘である令嬢からのいびりなどで、その悲惨な境遇は示されています(ただし、味方になってくれる同僚もちゃんといます)。その一つ一つはあまり過激なものではないのですが、エンディング手前の畳みかけるような、イジメ描写はさすがに堪えました。
もちろん、そのような描写にも意味はあります。先輩からの虐めは彼女らが前を向いて進むのに必要な推進力を得るための重要な出来事ですし、令嬢からのそれも、彼女自身の複雑な心中を表現するのにひと役買っています。ただ、それでも、夜明け前が一番暗いとは言うものの、主人公が不憫で、かわいそうすぎて……。辛い場面ではありました。そういうシーンが苦手な方は注意してください。
・総じて言えば、「人を選ぶかもしれないがよくできている」
ストーリー中心のゲーム自体の魅力の大部分が、登場するキャラクターの魅力や発生するイベントの心地よさにあると仮定するならば、このゲームは少し人を選ぶゲームかもしれません。イジメ描写はあるし、意地悪な先輩や雇い主は出てくるし、時々、主人公ですら口汚い罵りの言葉を吐くことがあります。日本の百合ジャンルの中でも、近年よく見られる、ほのぼのとしていて優しい物語を好む方には合わないかもしれません。
しかし、本作は先述したような誠実と言えるほどの描写があり、シーンごとに感情や状況の変化があり、起伏があります。シーン内において心情、情景説明などが効果的に描かれています。キャラクターがそう行動するに足る納得のできる描写があります。
総じて、
「丁寧」
「よくできている」
「確かなつくりである」
そんなゲームだと言えます。
しかし、ともするとそういった月並みな言葉で表現できてしまうゲームなのですが、そんな風にこのゲームを片付けてしまうのも本当にもったいないと思いました。合わない人には合わないだろうけれど、刺さる人には刺さる(本作に限った話ではありませんが)。
このゲームが合うか合わないか。
こればかりはプレイしてみた人のみが知る事柄です。
もし何か感じ入るところがあればぜひ購入を検討してみてください。

himat
2017年12月30日
少女の指に刺さった薔薇の棘を抜くミステリアスな女性。
19世紀、イギリスの片田舎で二人のメイドが出会うこの印象的なシーンからこのゲームの制作は始まったそうです。
主人公の少女が最初に抱いたその女性への印象は「他の全てを見下したような微笑みを湛えた嫌な人」
嫌なヤツ!嫌なヤツ!嫌なヤツ!から始まるラブストーリーのなんと尊いことか!
説明にもある通りこのゲームは選択肢を持たず最初から最後まで一本のストーリーで続いていきます。
良い物語は世界中に存在し、その一つがこういう形式で届いてくれた幸運にただただ感謝します。
ストーリーは信教、人種、生まれや地位、そしてもちろん性別にかかわらず人と人が愛し合う普遍的な物語を19世紀のヴィクトリア朝というラッピングで作り上げたため、当時の情勢を完璧に再現するようなことはありません。
実際の19世紀のイギリスでは同性愛については非常に非寛容でソドミー法として知られる法律により同性愛者は極刑とされていました。(もっともこれは男性間の同性愛についての話だったそうですが…)
もちろんだからといってそれが決して悪いことではなく多くのラブストーリーと同じように彼女たちは多くの困難に襲われ、そのたびに二人で乗り越えて行く姿を見せてくれます。
シリアスになりすぎず、かと言って終始お気楽なお話というわけでもない良いバランスといえます。
一つ残念なのが主人公二人の描写を重視した短編~中編規模の作品なのでせっかくの魅力的なサイドキャラクターたちの物語が消化不良に終わってしまう所。
いつかサイドストーリーとして他のキャラクターについても語ってくれると嬉しいです。
ストーリーを彩るのは文章だけではありません。
BGMは印象的なものが多く、特に主題歌Blackberry Honeyのインスト版は楽しげな場面を盛り上げてくれました。
また、物語の重要なキーを握るバイオリンとその演奏は演出も相まって涙を誘いました。
このゲームには多くの劇作家、詩人、作曲家の名前が登場するので彼らのことを調べるのも一つの楽しみでした。
例えば屋敷のわがままな娘はサッポーという詩人の詩がお気に入りですが、この人はレスボス島出身だったそうです。
逸話を調べるとなるほどな、と思うことしきり。
ゲームを彩るoxykomaさんのグラフィックは可愛らしく肉感的です。
シリアスなシーンだけでなくコミカルなシーンにも印象的に挿入されており、欲しい場所にしっかりとイベント絵が挿入されています。
ヌード、性的表現のタグがついていますが性表現自体は基本的には心のつながりが重視されたマイルドなものになっています。
Good
ストーリー、特に印象深いThe Thornのエピソード
BGM
グラフィック
Bad
特にセーブでもたつくUI
魅力的だが若干物足りなさを感じるサイドキャラクターたちの描写
総評
ロングスカートのビクトリア朝メイドさん同士のラブストーリーが読みたければ英語を乗り越えてでもプレイする価値があります。公称10時間のプレイ時間ですが22時間かけて読み進めても全くダレず最後まで楽しむことができました。
ロリーナとタオファの未来に幸あれ!