






Lilja and Natsuka: Painting Lies
「あなたの心の色は何色ですか?」盲目の画家リリヤと元気なアシスタントのナツカが、依頼人の依頼の裏に隠された謎を解き明かしていく心温まる物語。フロントウイングが贈る全く新しいビジュアルノベル。」
みんなのLilja and Natsuka: Painting Liesの評価・レビュー一覧

Aikaterine
01月08日
[h1]「我が鳩は、橄欖の葉を携えり!あとは——私の仕事だ」[/h1]
今までプレイした百合ゲームの中に一番震撼させられた素敵な作品です。最高とでも評価できます。
一見絵が主旨な作品ですが、実際にミステリー要素が入っている探偵と助手の物語です。謎を解して、真実を明かし、お互いに信頼し合って、お互いの救いになり、最後は大団円のハッピーエンドです。クリアした直後で万感な思いを放ちたいですが、感動によって何も言えずにただ褒めるしかできない状態です。素晴らしいです!百合が好きな方に是非お見逃しなく、お勧めいたします!

Maru
2024年07月27日
絵◎
ボイス◎
女→女の心情描写のテキスト◎
音楽◎
リルヤとナツカのイチャイチャシーン◎◎◎
全方面で丁寧に作られた女女のミステリービジュアルノベル
プレイして本当よかった
プロローグ+4章の短編連作で実際やると結構ボリュームある
最初ミステリーとしてはガバいなと感じる部分もあったものの、全編プレイすると印象が変わるお話もある
トリックがどうとかそういうことに重きを置く話ではなく、一番重要で面白いのはあくまでも女たちの心の謎
この作品には謎を抱えた女たちが数多く登場し、各話で様々な業の話が楽しめる
彼女たちが誰を愛し、誰を憎み、何を望み、どのようなあやまちを犯し、どのような方法で思いで何を成し遂げようとしたのか
様々な女たちの罪や恋や欲望や愛の話を、神スチルとボイスとテキストで堪能できた
スチルの美しさは本当ガチ
でも一番の謎と魅力は語り手ポジションのナツカというキャラそのもの
なぜこの子はその年でそんなにあらゆる物事に感動するのか、なぜそんなに屈託がなく無垢なのか?
その謎がわかる頃には[spoiler] ナツカがプレイヤーに近い存在のはずだった語り手ではなく、危うく愛しく応援したいヒロイン的な存在になっており、ナツカを案じ愛する15歳のリルヤの方に共感するようになっていた [/spoiler]
[spoiler] 探偵とワトソンの間に終始裏切りはない それぞれ異なる喪失を抱えた二人は、その喪失ゆえに運命の出会いを果たし、今ではお互いがなくてはならない存在として支え合っている リルナツ(CP名)最高一生添い遂げてくれー [/spoiler]

🍣
2024年07月26日
[h2]盲目の車椅子画家とおてんば少女が日常の謎を追う、百合ミステリ・ビジュアルノベル[/h2]
[h3]Q.パッケージの女の子ふたりは恋人どうしですか?[/h3]
[h3]A.恋ではなく翼[/h3]
お互いが信頼しあい、お互いを必要とする。
性的な観念が介在しないからこそ、より密接に肌を寄せあう絆。
同一化でも束縛でもなく別個の人間として尊重し、違う世界を旅するための比翼。
キスシーンは[spoiler]あります。[/spoiler]
[h3]よかったところ[/h3]
[list]
[*]結ばれるために恋愛感情を必要としなかった強力な主従関係
[*]恋愛感情を含むさまざまな女性たちの、一風変わった群像劇
[*]サスペンスではなくヒューマンドラマ。爽やかなミステリ
[*]フルボイス。地の文を極力廃したことによる高いAUTO適正
[*]人気イラストレーターによる美麗なキャラデザ・スチル
[/list]
[h3]気になったところ[/h3]
[list]
[*]各エピソードの序盤で容易にメタ読みできてしまうトリック
[*]乱雑でカタルシスに乏しい推理パート
[*]第三者の考察によって開陳されていく本人たちそっちのけの群像劇
[*]冗長でなんどもおなじ内容が繰りかえされるテキスト
[*]肝心なところで地の文になり読みあげられない独白
[*][b]視覚障害者を主人公としながらも十全でないアクセシビリティ[/b]
[/list]
お悩み解決系を思わせるあらすじなこともあり、もしかすると主役ふたりの掛けあいはさほど見れないのでは……と懸念を抱いていたが、[b]むしろふたりの掛け合いしかないレベル。[/b]いい意味で予想を裏切られた。おてんば側がおしゃべりなのもあるが、クール側も無口ではなくよく喋り、己の感情をすなおに伝えるタイプなので、[b]お互いがお互いをどう思っているのかがわかりやすく満足度が高い。[/b]
サブキャラクターたちのなかには[b]明確に同性への恋愛感情を述べる人物が複数おり、恋愛関係もじゅうぶんに描かれている。[/b]また女性から男性への思慕は目立つように取りあつかわれておらず、その手の描写が苦手な百合好きにもおすすめできる。
[b]しかし個人的には引っかかる点が多かった。[/b]
まず本作のミステリ部分となるサブキャラクターたちの謎だが、その核心となる部分が[b]「一風変わった関係性」[/b]であるため、[b]それ[/b]が何か推測できてしまった途端面白みのないものになってしまう。よきミステリ作品であればたとえネタバレされたとしても謎解きの手順や人間たちのドラマ、解かれたあとの展開などで楽しむことができるが、本作は勿体ぶって[b]それ[/b]に力点を集中させているため拍子抜け感が強い(後述する問題点との相互作用もある)。また「関係性」の性質上、[b]パズルのような関係性妄想に慣れている鑑賞者ほど早期に「気づいてしまう」可能性が増える[/b]。これはたとえだが「この作品は叙述トリックです」などのように前置きされるだけで大幅に魅力が削がれる構造になっている。ひとひねりした発想にとどまらず、そこからさらに二転三転もした展開が臨めれば……と、惜しさを隠しえない。またどれもが[spoiler]ひとりの精神的動転や独りよがりに起因している[/spoiler]ため食傷ぎみになる。
[b]推理パートが当事者たちのいない第三者の会話によって進行されていく[/b]ことでより陳腐さが増している。
依頼主の人生に迫ることで最適な絵を仕上げる。カウンセリングのような画業を営む主役ふたりが依頼主の嘘に気づき、主役ふたりだけで「こうこうこういう理由だからこういう嘘をついたんじゃないか」と議論をかわすことで「依頼主に何があったのか」が語られる。当事者視点を再現したドラマパートや、推理を聞いた犯人による反応、あるいは第一の推理につづいて起こる第二の事件などはないか僅かであり、ただ平文で(平文とよぶには乱雑で手さぐり感のある会話で)件の内実が述べられていくだけである。[b]これでは物語の登場人物があらすじを一から十まで喋りたおしているのと変わらない。[/b]よりにもよって謎の核心が百合的においしい「関係性」であるにもかかわらず、[b]そのときの当事者たちの反応をうかがい知ることはできない[/b]まま、第三者の推測で語られるだけだ。もちろん解決編で悩みを解消された依頼主のすがたが描かれはするが、できれば当時の感情をありありと感じたいというのが本音になる。
[b]これらの問題点をさらに深刻化させているのが冗長なテキストだ。[/b]
こればかりは本編を引用するのがわかりやすい。以下はすべて同一人物による発言で、指示しやすいよう番号をふった。発言まとめではなく、ゲーム内で連続して発言されるテキストで、固有名詞は代名詞などに差し替えてある。
[quote]①「それでも、事故のとき、〇〇は自らの使命を完璧に全うしました。本物の騎士のように、妹を守ってくれました」
②「ですから私たちは、〇〇の分まで前を見て生きないといけないのです」
③「幸せにならないといけないのですわ。◯◯はずっと、私たちの幸せを願っていましたから」
④「これまでは、◯◯がずっと私たちの手をとってリードしてくれました。これからは、私が妹の手をとってリードしていかないと」
⑤「後ろを見てばかりいては駄目なのですわ、前を見ていかなければ」
⑥「私たち、幸せになるんです。天国のお父様とお母様、そして◯◯が見守っているのですから。前を見て、幸せにならないといけないんです」
⑦「それが、私たち生きている者の務めですから」[/quote]
①は死者の意志を述べており、②はその意志をうけた決意表明だ。
③の前半部も決意表明であり、後半は死者の意志が書かれている。すなわち①②の変奏といえる。
④も前半部で死者の意志を述べ、後半に決意をあらわしている。①②を一つにまとめた文のようだ。
⑤は完全に②の複製。
⑥は②③の複製だが、両親もすでに亡くなっていることが判明する。しかし引用範囲前から両親の死は明かされており、単なるデッドコピーにすぎない。
⑦も言いかたを変えただけの②③であり、決意の裏に死者の意志を背負っている。
[strike]小泉進次郎ですら同じことは2回しか言わないんだぞ。[/strike]
強い決意が示されるシーンだけに、ここだけ念押しに書かれているのではと勘ぐるかもしれないが、「なぜテキストが冗長に感じるのか」を考えはじめたときに目についた文章がこれだっただけで、似たような言いまわしは作品全体をとおしてみられる。
以下は発言者AとBの会話。太字はわたしの注釈。
[quote]A「死んでも心の中で生きているっていうけれど、そんなことはないわ。[b]死んでしまった人は死んでしまって、それで終わり[/b]」
A「それ以上でもそれ以下でもない」
B「……確かにそうだとわたしも思います。[b]死んでしまった人は死んでしまって、それで終わりなんです[/b]」[/quote]
一字一句違わないオウム返しだが、さきほどの「新しいことを言っているようにみせかけて同じことを繰りかえしている」文章よりは脳への負担が少ない。脳への負担を懸念しながらノベルゲームを進めている時点でおかしくないか?
ノベルゲームである以上、難のあるテキストは全編をとおしたデバフとなる。前述した「ミステリ部分がなぜパッとしないのか」という問題点もほとんどは垢抜けないテキストに由来するといってもよい。結局のところ関係性に目新しさがなくてもストーリーが洗練されているか、キャラクターたちのセリフ回しにセンスがあれば見れるものになる。推理パートも主役ふたりの議論を中心に進められていくのだから、その筋道が整理されていれば楽しめたはずだ。せっかく地の文を減らしフルボイスで収録したにもかかわらず、AUTOで交わされていく会話は要点を得ずメリハリがない。それどころか重要な独白シーンで地の文になり、キャラクターの内面が深堀りされる部分に声があてられていないことが多々ある。
……と悪い点ばかりまくしたててしまったが、実際のところ群像劇パートが終わり主役ふたりの話が中心となる後半部からは、ダラダラとした会話が逆にふたりの親しさにつながるようでもあり、おてんば娘の朗らかさも相まってキャラクターたちの掛けあいが楽しめるくらいにはなっていた。ふたりを結びつけたのはおてんば娘がひっそりとやっていたWEBラジオだが、[b]まさに本作はラジオのように視聴することを想定された作品なのだろう。[/b]個人的には『ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』のストーリーモードに似た雰囲気があると感じた。
ひとつ気になったのは、[b]視覚障害者を主役としながらもアクセシビリティが整備されているとはいえないところだ。[/b]
たとえば2004年に発売された名作百合ビジュアルノベル『アカイイト』は、メニュー画面でカーソルをあわせたコマンドを読みあげてくれる。セーブ・ロードの画面に入ったこと、上書き確認などの重要項目はもちろん、コンフィグ画面ですらすべて選択項目に読みあげがつき、かつ好きなキャラクターのボイスを選択できるなど至れり尽くせりの機能がついていた。
『リルヤとナツカの純白な嘘』にもシステムボイスはあるものの、その読みあげ範囲は十分でない。[b]いまカーソルが何を指しているのかのガイダンスはない[/b]し、セーブ・ロード画面に入ったことは告げてくれるものの、[b]上書き確認のポップアップは読みあげない[/b]。[b]コンフィグ画面は読みあげはおろかキーボードだけで操作しきれず[/b]、[b]テキストログはカーソルを動かし決定キーなどを押すだけではボイスが再生されない[/b]。方向キーの上を押すことで前のテキストとボイスが再生されるノベルゲームがあるが、本作はそうではない。以上の点から視覚障害者がプレイするには細かい点で不便が生じかねない仕様になっている。できればアップデートでの改善を望みたい。
【追記】
このレビューを書いたのは物語の7割程度のタイミングだったが、結末ではミステリ部分に若干の発展がみられた。しかし物語体験にかかわる諸問題は据えおかれたままで、主役ふたりの物語に注目しなければ終盤までプレイを続けられなかったことを鑑み、あえて改稿せずにこのままにしておく。