Promesa

belfaste

2022年05月30日

英語の推薦レビューには「ウォーキングシム原理主義者以外お断り」という但し書きがあり、たしかにそういう作品。
そして、steam ユーザーの大多数はウォーキングシム原理主義者ではない。

かなり独特な体験をもたらしてくれる作品であることは間違いない。
暗闇に縁取られた一枚絵のような風景に近づいていくと、それが奥行きを伴う立体物であることがわかってくる。
そうして風景の中へ、建物の内部へと入り込み、のろのろと探索していく。
探索といってもインタラクションらしいインタラクションはほぼない。
何かを拾うとか、スイッチを押すとかは一切しない。
ただ夢の連なりのようなシーンを歩いて渡るだけだ。
何度も反復されるアパートの一室、広大な納屋、地中海っぽい街、狭い路地、路面電車……（おそらくはイタリアの）日常的な光景と幻想的な光と闇の織り成りに、プレイヤーは身と眼を委ねるしかない。
ときおり男の独白のような文言が差し挟まるが、ストーリーを明快にする助けにはなってくれないだろう。
このゲームをゲームたらしめるのはあくまでプレイヤーの感性であり、想像力だ。

本作にはウォーキングシミュレーターというジャンルの良いところと悪いところが詰まっている。
そして、純粋なウォーキングシムとは決して他人にオススメできないものであるのだ。
悲しいことに。