






Killing Time At Lightspeed: Enhanced Edition
光の速さでソーシャル メディアを閲覧します。 友達が瞬く間に年をとっていくのを見てください。 それに対してできることは何もないことを理解してください。 最後にもう一度、友達に愛していることを伝えてください。
みんなのKilling Time At Lightspeed: Enhanced Editionの評価・レビュー一覧

braun_k
2021年06月14日
西暦2042年、人類の宇宙開発は太陽系外へと及び、職を求めて多くの人が新天地へ旅立っていた。主人公Jayもその一人で、火星発グリーゼ667C行きの便に乗ることとなった。この恒星間航行は亜光速のため、約30分の航行の間に地球では数十年が経過する。
このゲームはその航行中に、SNSのタイムラインを読み、コメントしたり、ニュースサイトの記事を読んだりするという形式のテキスト系ADVです。
日本語非対応ですが、テキストはほぼ全てコピーできるので、DeepLにコピペしていけば概ね問題なく読めます。
セーブ機能がないので注意。プレイ時間は1周2時間ほどを想定されていますが、テキストを隅から隅まで読むタイプの人は3~4時間はかかります。
音楽は良いと思いますが、ループができていない曲があって残念(その曲が特に好きなので尚更)。
全実績解除は簡単で1周+αで終わりますが、実績解除のための2周目もスキップせず1周目との違いに注目するのがおすすめ。
以下、ネタバレを含む感想
[spoiler]基本的にはSF・ディストピア的な話を読むADVですが、自分がハマったのはそこではありません。
SNSをモチーフにしたADVは珍しくありませんが、本作ではプレイヤーが亜光速航行をしているのがポイントで、タイムラインを更新する度に地球では半年~1年半もの時間が経過しています。リプライを送ることもできますが、もちろんリアルタイムでのやりとりはできず、友人は歳を取り、人間関係や仕事は変化し、自分はそれについていくことができません。そして最後に目にするのはSNSの死です。
長年住んでいた土地を離れて何年も経つと、思い出が色褪せていくのと同様に、その土地やそこにいた人々も過去の存在になっていきます。今はネット上で人との繋がりを維持することはできますが、それもいつしか薄れていくものです。
この作品では、かつての友人との距離が、空間的・時間的・心理的に離れていくという普遍的な事象を、ウラシマ効果を用いることで、途方も無いスケールで見せつけられているのです。
ウラシマ効果を利用したフィクションでよく見られるのは「地球に帰ってきたらX年経過していた」という結果を示す表現ですが、本作では時間のズレを段階的に見せていき、かつ地球に帰らないことによって、リアルな寂寥感が生まれていると感じました。
地元を離れて一度も帰っていない人や、利用していたSNSや掲示板などの交流サイトが終了したことのある人におすすめしたい作品。
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