









リーガルダンジョン
リーガルダンジョンは警察の捜査資料を整理するゲームです。このゲームには 14 のエンディングと 6 つの実績があり、かわいい Screen Mate ショップもあります。他人の命を裁き、すべてのアイテムを集めよう!
みんなのリーガルダンジョンの評価・レビュー一覧

zangiriatama
2020年10月10日
[h3] ”邪悪な警官”ロールプレイング [/h3]
「善行は0.5点。窃盗は2点。殺人は15点。」(ゲームオーバー画面より)
このゲームでは被疑者をダンジョンに巣くう敵に見立てています。罪を着せて倒せば得点が入り、見逃せば何も得られません。主人公は警察組織の一員として成果が必要であり、敵からより多くの得点を搾り取ることを求められます。
では問題です。フリーぺーパーを大量に持っていった老人は無知な一般人(0点)ですか?それとも窃盗犯(2点)ですか?或いは窃盗団のリーダー(5点)ですか?ええ、答えはもちろん窃盗団のリーダーですよね。なにせ5点は美味しいですから。
一事が万事この調子で倫理的な選択はゲームオーバーを意味するため主人公は悪に染まっていきます。ですが本当に悪いのは成果を求める警官でしょうか?それとも成果を求めるように強いるシステムでしょうか?
邪悪な警官をロールプレイングさせることで警察組織内における成果主義の問題点を伝えるという試みは斬新で面白いと思います。よく作り込まれたストーリー故に説得力がありますが、同時に組織内外の様々な圧力により意志に反した行動を強いられる不快さや無実の人間に罪を被せて成果を稼いでいく後ろめたさを強く感じさせます。
楽しいゲームではありませんが、面白いゲームです。

khr32
2020年09月23日
ロジックに基づいて資料を作成し、最終的な判断とそれに合う内容を調書や判例から探し出すゲーム。
構成要件の組み立てなど作者が法律家なだけあってかなり本格的なゲームで、
その分難しく、しっかり資料を読み込まないと先に進むのが困難になります。
システムの作りこみだけでなくストーリーも題材がとても切り込んでおり(どう切り込んでいるのかは実際にプレイしてみてください)、読み物としても非常に面白かったです。
また、素晴らしい日本語訳。題材が題材だけに微妙な表現の違いによりゲームシステムが破綻してしまう恐れがありますが、最初から日本語ネイティブで作っていましたって言われたらそう思うくらいに自然な翻訳です。

mm4651
2020年06月30日
こういうゲームをやりたかった。
製作者「SOMI」には、良いゲームを作ってくれて本当に有難う、と言いたい。
刑法では、過失罪がある罪において、たとえば、事故で人が死んだように見えるが、犯人がわざと殺したのでは無いかと疑われるような場合でも、その犯人について殺人の故意が立証されなければ、殺人罪ではなく過失致死罪となる。
仮に犯人が自白せず、故意を立証する客観的証拠も突き止められなければ、同じ結果つまり被害者死亡という結果は何も変わらないのに、故意の立証の有無の違いのみで、殺人か過失致死か、量刑が全く大きく異なる。
犯人が誤って死なせてしまったと供述していても、客観的証拠を積み上げて、そこに死んでもやむを得ないとか、当然に死ぬことが分かっていたと判定出来うる状況であった場合には、そこには「未必の故意」が認定される。
といったことは、大学で法律を学んだ方なら常識だが、このゲームはこのような、刑法上の微妙な争点を、過去の判例を基にゲーム化したもの。
刑法、刑事訴訟法を専攻していた自分としては、これぞやりたかった夢のようなゲーム。
この他にも、おとり捜査は何処までならば合法でどこからは違法か、など、法律の条文を読んだだけではどちらとも取れるような、判断に迷うような事例が多々、出てくる。
こうした難しいテーマを楽しいゲームにまとめ上げた手腕は凄いとしか言いようがない。
このようなテーマが趣味に合うならば、是非買ってプレイしておくべき逸品。
脳内にアルファ波が出まくる神ゲー。

Ward Eight
2020年01月09日
[h1]あんたが新しい係長か、よろしくな。[/h1]
[h2]仕事の前に言っておきたいことがあるんだ。[/h2]
犯罪を取り締まってるだけじゃ昇進できねぇぜ警部補、
人間関係が重要なのはどこの組織でも一緒だぜ。
はらの中で何を考えてようが、表に出さなきゃ問題ないのさ。
ヤクザなんかよりよっぽどウチの方が腐ってるんだよ。
スジを通した人間が割を食うんだ。わかるよな?
。。。悪いな引き止めちまって。さて、そろそろ仕事を始めますかね。

hebon
2020年01月01日
警察官(警部補)となって事件の捜査書類から情報を集め、被疑者を検察官送致するにあたり「起訴意見」ないし「不起訴意見」を書くゲームです。
主人公が提出するのはあくまでも「意見」であるため、実際に被疑者が起訴されるか否かは検察が決めます。
ここで注意しなければいけないのは2種類ある主人公への評価ランク、すなわち警察内部での成果ランクと司法全体からみた法執行機関ランクです。
これらはA~Fまで評価があり、成果ランクは起訴意見を書くことで上がり、不起訴意見を書くと下がります。他方、法執行機関ランクは警察(自分)と検察・裁判所の最終結論が一致した場合に上がり、不一致の場合に下がります。このランクが下がる典型的なケースは、起訴意見を提出したのに裁判所で無罪が確定した場合です。
したがって、一般的に2つのランクはトレードオフの関係にあり、どちらかがFまで落ちるとゲームオーバー(バッドエンドルート)のため、プレイヤーはバランス感覚を求められます。
このゲームの優れた点は何といっても本格的な刑事法の知識を学びながら楽しめることですが、極めて丁寧な日本語ローカライズがされていることにも触れておくべきでしょう。事件の捜査資料は10数ページから最後には50ページ近くにも及びますが、プレイしているかぎり誤植や誤訳のようなものは見受けられませんでした。ちょっとした表現の違いだけで進行不可能になってしまうほどローカライズに正確さを求められる類のゲームですが、全く問題なくクリアできます。翻訳者の方に最大の賛辞を送りたいと思います。

KTNatSapporo
2019年12月29日
このゲームに出てくるCISシステムは、[B]お手軽に起訴できるように助けてくれる強力なシステム[/B]。言い換えると、起訴する上で邪魔な情報は…?
昔からあるネタと、技術の進んだ現在のネタがあわさることで、いろいろなことを示唆するゲームになっていて味わい深い。ロクでもない新書買うよりずっとお得。

MATSUMIYAer
2019年08月25日
警察官となって起訴・不起訴を決定する書類を作成していくゲーム。
作成した書類によっては物語が分岐するようになっており、やりこみ要素もあった。
ゲームの演出や雰囲気はPapers Pleaseを彷彿とさせるレトロなドット絵な感じで、ゲーム性は逆転裁判に近いものを感じる。
ただし、全体的に難易度が高く、かつ正解に近い選択肢が複数ある場面もあり、理不尽さは否めない。
また、ジャンルにシミュレーションと書かれているが、実質はテキストアドベンチャーであり、その認識でプレイしないと肩透かしを食らうかと思う。
ゲーム性は月並みに感じたが、ストーリーは綿密に散りばめられた伏線を徐々に改修していく感覚が大変心地よく,良く作りこまれた物語だと感じた。

sanukiudon3sei
2019年07月28日
本ゲームは、とある署の若い警部補となり、事件を解決するテキストADVです。
そう説明すると、法廷で弁護士が活躍する逆転裁判を思い出すでしょうが、
本ゲームの主人公はいわば中間管理職。調書を作成、取調べを行い、
容疑者を起訴・不起訴どちらにするかを決めるのが一連の流れ。
しかし、このゲームの警察組織は検挙率を重視した成果主義で、
状況によってはポイント稼ぎの為だけに重視するなんて状況も出てきたりして、
正義感のある方や逆転裁判が好きな方にとってはかなりジレンマを感じることでしょう。
そして、このゲーム最大の魅力はそのストーリーでしょう。
ネタバレできないので、かなり簡単に書きますが、
一つ一つの事件もさることながら全体のストーリーも魅力的で、
その内容に引き込まれることは確かです。
また6月に日本語の翻訳が完了し、日本の開発スタッフが担当した事もあり、
海外ゲームにありがちな”違和感のある翻訳”というものが全くない為、
スムーズにゲームに入り込めます。
テキストADVと言う事もあり、長文が苦手な人にはつらいかもしれませんが、
こういうロジックタイプの推理ゲームが好きな方は是非プレイしてみてください。

SYANAMA
2019年07月12日
[h1] 【急募】 まだ誰も解き明かしていない謎がここにある[/h1]
ED1~13まで閲覧済みのレビューです。
[b] ■世界観[/b]
『真の犯人』とはいったい誰なのか?
主人公は警察組織の係長となり報告書類から犯人を送致するかしないかを決めていきます。
そのため貴方は自分の倫理観に従い、適切な論理を基に、その犯人の罪を決めそして周りから感謝される…というゲームではありません。
「検挙実績こそが治安のバロメーター」とゲームの紹介文にあるように、検挙実績こそが警察の全てなのです。
主人公をもし警察として"有能"にしたいなら、貴方は多少の倫理観を忘れ、そして屁理屈を基に"卑劣な犯罪者"を逮捕しそして評価制度を用いて警察内組織にアピールをしなくてはいけないのです。
「罪の意識がないから無罪」「疑わしきは罰せず」そう言った言葉は忘れ、検挙実績からの点数をひたすら稼ぎ続けましょう。
それが正しいことなのかは、誰にも分りませんが。
[b] ■シナリオ[/b]
ネタバレにならない程度に書くと、めっちゃ面白い。
そして主人公がカッコいい、キャリアウーマン素敵。
[b] ■システム[/b]
自分としては「分岐のあるトリック×ロジック」という風に考えました。
この犯人を罪するのか…に合わせてその証拠などを報告書から拾っていくゲームです。
慣れてしまうと簡単なのですが、チュートリアルの説明が少なく(というかわざと少なくしている?)
分岐システムなどになれるのに難儀します。
謎解き自体は、それなりに難しめといった感じです。
閃きよりも丁寧な分析が求められます。
[b] ■翻訳[/b]
このゲームは翻訳が本当に素晴らしいです。
「文法ミスや誤記などもってのほか」
「日本語にすべきところは日本語に英語にすべきところは英語に」
「言葉のニュアンスの違いもしっかりと反映」
「世界観に会った言葉遣い」
褒めようと思えばいくらでも褒められます。
というか自分より日本語がうまいです。
全ての翻訳の見本となるべき、プロレベルかそれ以上の翻訳です。
[b] ■ED[/b]
このゲームのEDはストアページにあるように14個存在するようです。
しかしこのED14への行き方は、おそらくまだネット上に公開されていません。
(或いは実績の数とED14は関係ない可能性があるので、だれもED14にたどり着いていない可能性があります。)
まず間違いないのは多くのプレイヤーはED14の存在に気付いてはいるようですが、まだ見つけられていないという状態みたいです。
一体どうすればED14に到達できるのか?
推理に自信のある方は、この最後の謎に挑戦してみてはいかがですか?
[strike] もし見つけたら攻略法などを教えて頂きたく[/strike]

Tatarou
2019年05月16日
この世界では、警察官は組織毎に稼いだポイントによって
評価がランク付けされ、給与や昇進、表彰の基準になります。
ランクが最低なら職務怠慢として懲戒免職もありえます。
重要なのは、裁判の結果がどうあれ起訴で意見書を提出してしまえば
成果としてポイントが加算されることです。
もうこの時点できな臭い臭いがぷんぷんしますね?
そしてこのゲーム、システム上完全な善人プレイはできなくなっています。
正確には、善人として慈悲を持った判断を下そうものならわずか第一章で退場と相成ります。
とはいえ、なんでも起訴にもっていけばいいという単純な問題でもありません。
汚く狡猾で、しかし表面上は優秀な警察のみが最終章までたどりつけるのです。

ashida
2019年05月13日
ED全開放、実績全解除 実績はEDを見る過程で自然に集まります。
キレイに作りこまれた小品といった感想。
一つ一つの事件のために用意されたそこそこの分量の捜査報告書を読み込みそれぞれの事件の流れを読み込んでいく、システムにサポートされるがままに事件の真相を解きあかしていけば自然と物語は一つの結末へと導かれる。[spoiler] しかし、その一つの結末で示唆された疑念、実績を解放しようと再び事件に向き合うとシステムが見逃していた、あるいは隠そうとしていたまた別の真相が順に明かされていきそれによって最初にたどり着いたはずの結末の裏側を知ることになる。[/spoiler]
難易度としてはそこそこ簡単気味ではあるが、逆転裁判のような突きつけるシステムにありがちなことに、多数の証拠の中から登場人物たちが理解している「正しい証拠」をプレイヤーが選び出すことができずにドツボにはまることが頻繁に発生する。特に二か所、一見してわからないように隠された証拠と常識、想像力が試される証拠の二か所について苦しんでしまった[spoiler] 二週目の証拠探しのほうがいっそ見た目でわからないように隠されている証拠探しで済む分探しやすいかもしれない[/spoiler]
ストーリーがよく作りこまれておりゲーム部分も分岐が明確、事件のUIもきれいにできていて非常に遊びやすい。とても面白いゲームでした。

Reversal!
2019年05月12日
[h1]警察官として捜査書類を作成し、事件の真相を追ったり追わなかったりするテキストADV[/h1]
プレイヤーは新任の刑事課課長・清崎蒼として、事件の捜査書類を作成します。
捜査書類には被疑者に関する情報、前科、罪状、事件に関する情報、そして意見書が含まれます。
いずれも捜査書類を読みながら適切な情報を記述していくだけですが、最後の意見書のみ「警官と被疑者による問答」という形で進行します。
この問答は主人公の脳内で行われている役割劇であり、シミュレーションです。
逆転裁判などのように、被疑者に証拠を突き付けて論破していくのです。
そしてここで面白いのが、被疑者を論破して起訴に持っていくこともできれば、被疑者を擁護するような証拠によって不起訴に持っていくこともできるということです。
もちろん実際に起訴するかどうかを決めるのは検察官であり、意見書はその一助でしかありませんが、ゲーム内では起訴・不起訴の判断材料として意見書は重要視されているようで、意見書の判断がそのまま反映されます。
そして本作の背景としてとても重要な点として、この世界の警察は「ポイント制による成果主義」が導入されているということが挙げられます。
窃盗なら2点、殺人なら15点という風に、検挙・起訴した罪の重さに応じたポイントが設定されており、高いポイントを挙げた警官や署には昇進や昇給が約束されているのです。
そのため誰もがポイント稼ぎに躍起になっているのですが、起訴まで持っていかなければポイントがもらえませんので、不起訴という判断を繰り返していると、成果ランクや署内からの評価が下がってしまいます。
かといって無理に起訴したところで、その後の裁判で無罪になってしまうと正確な法執行ランクが下がってしまいますので、うまくバランスを取っていく必要があります。
本作には8つの事件があり、各事件における起訴・不起訴の判断によってルート分岐があります。
一番簡単なルートでも全ての事件をこなすことはできますが、それだけでは各事件のつながりや語られなかった真相はわかりませんので、何度も挑戦したくなる作りになっています。
各事件や判例は韓国で実際にあったものをベースにしていることもあり、リアリティのあるものになっていますし、どの事件も一見すると「どちらとも判断がつかない」ようなものや「不起訴だと思われる」ようなものばかりなため、前述のポイント制もあり、どうするべきかかなり悩みます。
だからこそ真相に辿り着いた時の衝撃はかなりのものですので、是非プレイをオススメします。

reserva18
2019年05月09日
題材は非常に面白いと思いますがかなり高めの難易度が邪魔をしている。
まとめられているとはいえ莫大な情報量の中から正確な答えを見つけなければならない事やそんな事は分かってると言いたくなるようなほぼノーヒントと化しているアドバイスがこのシナリオの続きが見たいというプレイヤーの大きな足かせとなってしまっています。
ライト寄りな推理小説や逆転裁判等ユーザーライクに作られた現代のADVをクリアした程度では正直しんどいと感じるのではないでしょうか。慣れれば最後のED以外は回収できますがやはりハードルは高いです。
ゲーム内で手に入るコイン等でヒントを買える等何かしらの配慮はして欲しかったですね。
ゲーム内容がすばらしいだけに回収させる気ないだろと思えるようなED14の存在などマイナス点も目立つのが残念でなりません。
クリアできてかつシナリオに惹かれるものがあった方にとっては味わう価値が十分にあるゲームだと感じましたのでおすすめにさせてもらいました。

Ketto
2019年05月09日
男の子は警察官に憧れるのものだ。テレビの中じゃない身近なヒーローとして。
私も例にもれず憧れを抱いており、将来の夢は長い間警察官であった。
けれどもいつかある時、警察官とはヒーローという夢ではなく仕事だと認識したときから、この夢は捨ててしまった。
仕事とは無償の奉仕者ではない、成果によって収入を得るものだ。そうなれば当然評価が必要だ。ボヤより山火事、寝タバコより放火。これを突き詰めてしまったのがこのゲームの警察組織である。行き過ぎた成果主義が何を生むかはご想像の通りだ。
ただし、これは現実世界の組織ではなく、あくまでゲーム内、フィクションの世界である。
プレイヤーは刑事課の課長(中間管理職)であり、警察大学校を卒業したての新入”女性”職員。ゲーム内での彼女は検察へ被疑者の意見書を作成する。警察として起訴か不起訴、どちらが妥当なのかを申し送るためだ。それを受けて検察は起訴、不起訴を決定する。そして、起訴なら裁判を行い判決が下る。
この長いステップを経て刑が執行されるわけだが、警察が意図的に不起訴としてしまうとどうなるだろう。検察だって仕事が山とある、軽微な犯罪なら見逃されるかもしれない。正義感でもって政治的に守られている人物を起訴したら?検察や裁判で結局は無罪になってしまうのではないだろうか。
いやいや、主観を挟まずに法に則って執行すればいいだろう?
残念ながらそうは問屋がおろさない。法を解釈するのは人間であるし、法律にも穴がある。それに加えてガチガチの成果主義と来たものだ。これのどこに主観が入り込まない余地があろうか。
このゲームに逆転裁判のような爽快さを求めるてはいけない。真実はいつもひとつじゃない、恣意によっていかようにでも結果は変わってしまう。むしろ変えねばならないのがこのゲームのミソだ。
プレイしていて恐ろしくまた素晴らしい点は、本当に現実世界で起こりうると感じることだ。警察の不祥事はいつの時代、どこの国でも発生している。仕事というのは根本的に人の正義感と逆行する。上司からの命令を良心に反しているからと拒絶できる人間はどれくらいいる?少なくとも自分には無理である。
気分はよくならなし、一点本当に気が付けないと感じた選択肢もあるけれど、このゲームは素晴らしい。10時間もあればエンディングは見れるはずだ。ただし、それだけでは絶対に足りていない。2周目からは良心に則ってプレイできるようになる。そうしたとき、主人公たちがどうなるのか是非見てほしい。

Tama
2019年05月07日
[h1]「いちばんわるいやつ」は誰?衝撃の意欲作[/h1]
警察官(捜査課長)となり、さまざまな事件の供述書や捜査書類そして被疑者尋問を経て、検察に送る「意見書」を仕上げるという一風変わったコンセプトのミステリーアドベンチャー。なお主人公は女性。意見書の結論によってプレイヤーの評価とストーリーが分岐するマルチエンディング方式。ゲーム性としては「逆転裁判(検事)」+「WILL:素晴らしき世界」+「Papers, Please」などをそれぞれ彷彿させる。
供述書類には意外な部分に手がかりが隠されていることも多く、自分の想定通りの意見書を書くのはなかなか難しいが、シナリオやシステム面はよくできていて分岐を全て見つけた意見書は分岐をワンタッチで切り替えられるようになるため、ストーリー分岐を探すのはやりやすい(難易度は別として)。
さまざまな手がかりが散りばめられた供述書からどのように事件を解釈し、さらに最後の被疑者との問答でどういったやり取りをするかによって、最終的に検察に送る書類に添付される「意見書」の結論が変わる点がミソ。ゲームプレイを通し一貫して「恣意的な法解釈」を皮肉るテーマになっており、こまごまとした証拠書類や条文のどの部分を引っ張ってくるかで意見書の方向性はどうにでも傾いてしまう。
そして「意見書」はあくまで捜査機関としての「意見」に過ぎず、実際の裁判は当然検察と裁判所が行うので、判決までは動かせない。警察・検察・司法(裁判所)という三機関の立場の違いはもとより、「私」の所属する警察内部でも様々な思惑が渦巻いており、捜査書類・意見書提出の最終責任者である「私」は警察内部に交錯する様々な思惑の渦中に立たされることになります。
基本的に組織としての警察は検挙実績のためにあらゆる事件を「起訴相当」として扱いたい思惑があり、意見書をそのように書けば「警察内での評価」は上がると考えていい(例外も有る)が、証拠の状態などから判決を正確に予測した意見書(例えば証拠不十分で有罪にできないので不起訴相当という意見)で送検すれば上記とは別軸の「正確な法の執行者」としての評価が上がります(逆もしかり)。そしてこの二項がしばしば食い違うのが悩みのタネとなります。
また、街や警察内の権力者と事件関係者に隠れた繋がりがあって現場に謎の圧力が働いたりするケースもあり、ストーリー開始も早々に「警察という組織も突き詰めれば『個人』の集合体に過ぎず正義とは程遠い」という現実を突きつけられる。そのへんの、良心と立場・そして実際の法執行とのギャップ・ジレンマがよく表現されている点がこのゲームの白眉です。ストーリーの進行に伴い、最初は見えなかったそれぞれの事件を繋ぐミッシングリンクが徐々に明らかになっていく点も本当に見事。
いかにも官僚的な警察内部の権力争いや、一方で実際の犯罪性や個人の正義観に関わらずまるで民間企業のように「検挙ノルマ」をこなさなければ出世はおろか生き残ることもままならない現場の葛藤、そして汚職。警察の組織構造が抱えるリアルな問題に強く踏み込んだ内容は「踊る大捜査線」のようでもあるが、それでいてギャグはないためにダーティでハードボイルドな一流ドキュメンタリーのようです。
一つの小さな嘘は、連鎖的に次の嘘を要求する。初めは大きな正義を成すためにやむを得ず選んだはずの小さな不正は、結果として誰かの(自分の?)人生をも壊していく。一つ一つの選択が正義と職務の板挟みでプレイヤーを悩ませる。非常に読み応えがある意欲作です。タイトルの「Legal Dungeon」とは、法律と職務・そして良心のハザマで揺れる主人公の立場を迷宮に例えたものでしょうか。
韓国の個人デベロッパーによる開発で、多少の誤字はあるものの全体としては高いクオリティで日本語翻訳がされている(日本語版は人物名なども日本名になっている)上、警察と法のシステムも、おそらく韓国のそれに基づいてはいるのでしょうが日本とほとんど違わないので、国の違いによる違和感はほとんどありません(ゲーム終盤に「あ、車は右側通行なんだ~」とかくらいです)。強くオススメ!
一つだけ難点として、大河小説なみとは言わないものの登場人物がかなり多い。にも関わらず事件の関係者など全て書類上の「名前」として扱われるのみで、警察官の同僚すら顔グラフィックもなく名前と階級と会話文だけで各キャラクターの立場と性格・性向を把握しなければいけないため、話をちゃんと把握するには読解力はもちろんのこと、ある種の「察する」能力が必要です。キャラクター像がまだわからない序盤などは会話の意味もわからず五里霧中になるかと思います(反面、関係性を把握するにしたがってストーリーや過去の会話の意味も見えてくるというカタルシスがありますが)。文章慣れ・小説慣れしていない人だとかなり辛いことから、想定年齢層はだいぶ高めな社会派サスペンスです。
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