Antrabhara

kamioka

2023年07月19日

ほのかな明かりを頼りに打ち棄てられたお屋敷を探索するホラーアドベンチャー。主人公は記憶を失っているけれど、なぜか狐のお面を持っている。何もかも分からないままに残された痕跡を辿っていくうち、はるか昔から続く因果が少しずつ明らかになります。
まずは薄暗い屋敷をはじめとするグラフィックが見事。ホラー要素がしっかりあるのと同時に退廃と陰影の美学があり、フォントや言葉選びも洗練されていて美しいです。繊細なイラストのキャラクターはそれぞれに個性的で、喋ると案外親しみやすい側面を見せてくれます。
恐怖や謎解きよりも物語の比重が大きく、力の入った演出を味わいつつ隠された謎を追求していくのが面白い。そもそも全てが謎めいた筋立てなので、中盤から終盤にかけてそういうお話だったのか、と気づくとまた見え方が変わってきます。実は和風の要素も多め。水干風の衣装のような表面から根幹の思想まで、中陰はなかなかに奥が深い。ゲームに物語を求める人には特におすすめです。